2016年12月27日火曜日

「サヴァイビングカスライフ vol5 (ライブ喫茶亀 メルマガ12月号)」片岡フグリ



「なんだこれ?VR?俺、いつヘッドマウントされた?」
と思ってしまうほど、圧倒的に浮世離れした光景がそこには広がっていた。
床一面ピカピカに磨き上げられた大理石。
ゆうに10メートルは越えるであろう頭上にはステンドグラスが控え、
あらゆる神、天使、その他ホーリー方面の、職務:威厳、的方々が揃い踏んで描かれている。
前方祭壇には生オルガンとバイオリン奏者、そして両翼では満面スマイルを湛える聖歌隊が、これ以上ないくらい清く美しい歓喜に溢れた旋律をジュークボックスしており、その過剰な潔癖は、むしろ力ない笑いを誘発するレベルの独特な超越空間を創出していた。
そこは教会。
産まれて初めて行った結婚式であった。


だって、嬉しいこと。
クリスマス、誕生日、記念イベント、などなどあらゆる重要タームには基本、
呼ばれない、誘われない、あったことすら知らない。がもはや定例と化していた。
故に「今度ダチの挙式があってヨォ、おいら、そこに呼ばれちゃってるワケ~~」
という軽薄プロデューサー的題目を折に触れ喧伝できる境遇は、
懐中の缶コーヒーのように、手を伸ばせばそこにあるホットな拠りどころを与え続けてくれていた。

前日夜のライブ演奏を終えてすぐ、メンバーに片付けを任し、その足で夜行バスに乗り込んだ。兵庫県姫路市への到着は翌、朝6時。

前方をたまに通過する怪訝気味なフロントボーイに「俺は客」という軽い威嚇を与えながら、宿泊予定のシティホテルに陣取ること4時間。とある文学賞へ向けての執筆に勤しみながら、「ホテルのロビーもいつまでいられる訳もない」を実体験した。

筆が止まったのを皮切りに、駅前にて名物「明石焼き」で小腹をシャラップ、姫路城隣接の動物園へと移動。
懐かしい道のりだった。数匹のダックスフンドを従えた老婆、牡蠣とビールに舌鼓を打つ夜勤明けのリーマン。週末の関西。

思いの外、園内は広い。幼少の記憶なんて曖昧だ。なんせ入り口のフラミンゴと、出口のびっくりハウスしか覚えていない。
2時間ほどをそこで費やし、城下の喫煙所へ移動すると、何やらローカルなセンテンスがこだましてくる。
「べっちょない、ベっちょないてぇ」
「せやろかなぁ」
「せやせや。べっちょないて、殺されたりはせん。足洗ったんやろ?もう」
小指なき年配者のほのぼのトークをバックに紫煙を燻らし、
時間となったのでスーツに様代えた俺はシャトルバスへと乗り込み、会場へ向かった。
そして、披露宴の扉が開く。

と、以降四時間強のレポートを長々とするのもアレなので、最も純文学していた箇所だけを抜粋して書こうと思う。

会場には主役たる新郎と、もう一名の知り合いしかいなかった。
故に、酒が回るまでは若干の緊張を強いられたものの、東北一人旅の際、知り合いほぼゼロからの名物フルコース、泥酔、意気投合、あだ名の享受、隣り合っての嘔吐、そして旅館のベッドまでをも手にした無敵のコミュニュケーション能力をここぞと発揮し、原料すら判別のつかない「神々のお食べ物」的料理を肴に、談笑、舌鼓を打つことに成功。

新郎と出逢ったのは、とある友人を通してだったが、その友人の姿は会場にはない。
彼と新郎は、敵わなかったが、シェアハウスを目論むほどの仲である。
体調を崩している、と聞いてはいたが、他の理由もあった。
それはいわゆる三角関係のあやというヤツである。
花嫁が、元カノ。
自分も経験があるので、よく分かる。
割り切れてはいてもギクシャクしてしまうあの感じ。
未練はなくとも、親友に寄り添うかつての恋人の姿には出来れば目の当たりたくない。
関係が深ければ深いほどに。
そりゃあ建前上は幸せそうに笑っていて欲しい。
けれど、そうは思えない小さな自分も見たくない。あるいは「今」が揺らぐ瞬間も。

たけなわになった頃、おもむろに新郎は立ち上がる。
「戦隊モノに例えるとすれば、彼女はピンク。でも、俺は主役じゃないんです。
赤レンジャーじゃないんですよ。せいぜいブルー。いつも見ていたブルーです。
レッドは、俺じゃなかったんです」
そう言って、スポットライトが当たった先に居たのは、レッド。いない筈の彼だった。
雄壮と会場を横切り登場した彼は新郎と握手、そして笑顔で共犯者へのいたずら染みたアイコンタクトを交わす。
してやられた観衆は口々に憎まれ口を叩きながらも親愛の情を露わに、彼へと駆け寄る。
こんな真似、俺にはできないな。
「行かねーよ、そんなの」と未だに断ってしまうかも知れない。

胸中が如何様にせよ、二人の「漢」を見た気がして、
正直に言って俺は感動し、涙ぐんだ。
これは、文学じゃないか?そう思った。

いい式だったなぁ、と二次会にまで参加し、命がけで酒と飯を摂取、
ぽんぽこぽんでホテルに戻り、ぐっすりしこたまとことん寝る。
何度目かの寝起きに「あそこまでしても浮気するやつはするんだもんなぁ」と思ったが、口にはしなかった。

執筆原稿は、勘違いで規定枚数を70枚近く軽く見積もっていた為、

あえなく今年は諦めた。また来年。俺は俺で。



2016年12月21日水曜日

おしるこレコーズのレビューブログに、
クソ泥酔してROTH BART BARONを初めて観た日のことを書きました。
http://blog.livedoor.jp/taroomihouse1101/archives/1063204851.html